30代事務職OLのひとり暮らし戦記

世間知らずの喪女がひとり暮らしに悪戦苦闘中

空の都の神々は(著:N.K.ジェミシン)


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光の神と闇の神と黄昏の神がいる世界。
三神の争いにより光の神が勝利し、その信徒たちがこの世の春を謳歌する世界。
敗北した神々は使役され貶められ、信徒たちも奴隷のように扱われている。

差別の蔓延る人間世界で、上の階級の母と下の階級の父から生まれた少女が、光の神及びその眷属たちに立ち向かう物語。

主人公に秘められた真実も含め、どこかで読んだ気がするなあ……と思っていたら空色勾玉だ。
アメリカ版空色勾玉。

でも主人公のしなやかな思考が心地よくてよかったです。

多神教の世界の神様って得てして人間に対してグイグイ来るのが可笑しい。

神様なのに色々なしがらみに縛られて不自由で、多大な力は使えないしあまつさえ首輪までされたりして。
でも人間は、その一見無力な神様が一度力を解放してしまえばどれほど怖ろしいことが起こるかわかっている。人間など一顧だにしないことをわかっている。だからこそ非友好的な態度を取って、無理矢理首輪をつけてしまう。

巨大な力を飼えるという思い込みがどれほど愚かなものなのか……と小難しく考えるよりもむしろ、
情ではなく力関係だけで縛られただけの関係性ってイイネ!と思いながら読むものかも。

主人公の生まれた地では「エスイ」という言葉がある。

ダール語には、危険に心惹かれる思いを表わす、「エスイ」という言葉がある。(中略)
これに一番近いのは「欲望」だろうが、それでは「エスイ」の幾重にも重なった性質を充分にとらえてはいない。その華々しさと狂気を。それは思慮のないもの、理性のないもの、まったく安全とはいえないものすべてを表す――だがエスイがなくては生きる意味はない。

このエスイに主人公の少女は一時囚われてしまうのだけれど、危険だとわかっていながらその腕に抱かれたくなってしまうときの、恐怖と恍惚の表現がすごく好き。


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